楽焼
● 楽焼は、桃山時代に始まり、四百有余年の歴史と伝統を持つ、京都で生まれた我国独特の焼物です。
古来、茶人は一楽、二萩、三唐津と言って、楽茶碗を第一位に愛するのは、確かに味わいが深く、手ざわり、口ざわりと、使い心地が良いからでありましょう。
楽の名称は天正年間(西暦1573年~1592年)、瓦工 阿米夜の子で長祐(通称長次郎)が千利久の指導により、楽焼を創始し、秀吉より「楽」の金印を受けたのが始まりで、代々名工が続き今日の隆盛をみています。
● 楽焼の特徴 楽焼の特徴は手捏ね(てづくね)成形と内窯焼成です。
◇手捏ね成形は、轆轤(ろくろ)を使わず、手で土をこねて形を作り、篦(へら)で削って姿を整える技法です。
◇内窯焼成は、家屋内に作られた小規模な窯で750~1100℃の低温で焼成する技法です。
手捏ねで成形した器を窯入れ・焼き締めした後、窯から取り出し少し除冷した後、水に付けて急冷いたします。
一般的に陶器は、登り窯の様な大規模な窯で大量の陶器を1300℃の高温で60時間前後、焼成します。
高温で焼き締めを行いますので、器の窯出しは慎重を要し、直ぐに取り出しますと急冷で器が割れてしまいます。焼成と同じ位の時間をかけてゆっくり窯を除冷した後、窯から取り出します。
内窯焼成の楽焼は低温で焼き締めして急冷いたしますので、器の組成分カオリン、長石、石英等が完全に溶融・ガラス化せず、多孔質な吸水性がある(水分が滲み出る)焼物に仕上がります。
お抹茶碗として、長年、お使い頂きますと、お抹茶が楽焼に染み込み独特の風情を醸し出します。
●楽焼は
手捏ねによる僅かな歪みと温かい人の手の篦の削り
使用に従い、お抹茶がお碗に染み込む風情
美は一時の永遠のものではなく
移ろい行くもの に美を見いだした千利休の神髄と申せましょう。